サステナビリティ関連の情報開示義務
サステナビリティ関連の情報開示義務について
日本では、サステナビリティ関連の情報開示義務が強化されつつあり、特に気候変動に関連するリスクと機会の開示が企業に求められています。これは、国際的な基準や国内の政策動向を踏まえ、投資家やステークホルダーに対する透明性を高めることを目的としています。
1. 国際基準に基づく情報開示
ISSB基準
- ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)は、サステナビリティ関連の情報開示基準を策定するために設立されました。
- 2023年6月、以下の基準が発表されました:
- S1基準: 企業の全般的なサステナビリティリスクと機会の開示。
- S2基準: 気候関連のリスクと機会に特化した開示。
- これらの基準は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の推奨事項と整合性を持ちます。
TCFDに基づく開示
- 気候関連のリスク・機会を以下の4つの柱に基づいて開示することが求められます:
- ガバナンス: 気候関連リスクを管理する体制。
- 戦略: 気候リスクと機会が事業に与える影響。
- リスク管理: 気候関連リスクの特定・評価・管理方法。
- 指標と目標: 温室効果ガス排出量や削減目標などの数値情報。
2. 日本での情報開示義務の動向
金融庁の対応
- 日本では、金融庁がTCFDに基づく開示を上場企業に義務化する動きを進めています。
- 2025年度から段階的に開始され、特に以下が対象となる見込みです:
- プライム市場の上場企業(大企業)。
- 一定規模以上の非上場企業も対象になる可能性。
企業会計基準の対応
- サステナビリティ情報の財務諸表への統合が議論されており、環境・社会・ガバナンス(ESG)関連のリスクが財務パフォーマンスにどのように影響するかを説明する必要があります。
3. 具体的な開示内容
- 気候関連情報:
- 温室効果ガス排出量(Scope 1, 2, 3)。
- 事業の気候変動適応計画。
- ネットゼロ目標や再生可能エネルギー利用率。
- ESG情報:
- 社会的インパクト(例: 労働環境、地域社会への貢献)。
- ガバナンス体制(例: 取締役会の構成、リスク管理プロセス)。
- 財務情報への影響:
- 気候変動が収益やコスト構造に与える影響の説明。
- 移行リスク(政策・規制対応)や物理リスク(自然災害)の財務的影響。
4. 企業への影響
- メリット
- 投資家やステークホルダーとの信頼関係の強化。
- サステナビリティに取り組む企業イメージの向上。
- サステナビリティ関連の資金調達(グリーンボンド等)へのアクセス拡大。
- 課題
- 必要なデータ収集と分析の負担増。
- 専門知識を持つ人材やシステムの整備。
- 短期間での対応には高コストが伴う可能性。
5. 今後の展望
- 日本では、国際基準(ISSB、TCFD)を基にした国内規制が整備され、サステナビリティ情報開示が重要な経営課題となる見込み。
- 将来的には、気候関連リスクの開示が一部の大企業にとどまらず、サプライチェーン全体や中小企業に広がる可能性があります。
まとめ
サステナビリティ関連の情報開示義務は、企業の透明性を高め、気候変動への適応とリスク管理を強化するための重要なステップです。企業は早期に体制を整え、長期的な競争力を確保するために対応を進める必要があります。